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Robert Todd Carroll

SkepDic 日本語版
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病的科学 pathological science

ノーベル賞化学者 アービング・ラングミュアは、死去する数年前にジェネラルエレクトリック社のクノール原子力研究所で、``病的科学''についての講演を行なった。彼はブロンドローのN線など、いくつかの例を挙げて、病的科学を以下のように規定している:

こうした研究は、不誠実によってなされているわけではありませんが、誤った結果によって自分自身も騙されているのです。こうしたことは、人間がどれだけ主観やないものねだりや、閾値の扱いに影響されやすく、それゆえに正道から逸脱してしまいやすいか、それを知らないために起こるのです。ここでは病的科学について、実例をあげてお話しましょう。どのテーマも多大な関心をひきつけたもので、それぞれ数百本の論文が書かれています。テーマのいくつかは15年から20年間続いて、そのあと次第に死滅していきます... 以下に示すのは病的科学の特徴です...

最高の結果が観測されるのは、原因の強度を検出可能限界ぎりぎりまで下げた場合である。

これらすべてに共通する特徴としては、こうした観測が視認可能な限界の付近で行なわれているという点も挙げられる。視覚以外の感覚も働いてしまうのだろう。

きわめて正確であると主張している。

ふつうは``経験に比べて理論が素晴らしすぎる。''

批判すると、適当にひねり出したその場しのぎの言い逃れしか返ってこない。

批判する側を支持する者の割合は、いったん50%程度にまで増加するが、その後ほとんどいなくなってしまう。批判する側は結果を再現できず、支持者だけが再現でき、したがって意義あることがらは、何も得られないからだ。

A・クローマーは病的科学の持つ上記の特徴について、以下のようにコメントしている:

(1) 科学のプロセスにおいては、しばしば科学者自身が下手な審判とな る。
(2) 科学的研究は非常に困難である。間違いやすいことがらは、たいて い間違ってしまう。
(3) 科学は、科学者の誠実性や分別と独立して存在するわけではない。
(4) 過去の科学的経験と反するような現象を本当に発見するのは、きわ めて困難である。一方、過剰な熱意や妄想から、不正行為や虚偽の結果や、 愚行や、誤りが生ずるのは、よくあることである。

ラングミュアの考察は、プリオンや常温核融合、ゼロ点エネルギーといっ た、議論の分かれていることがらを科学者は避けるべきである、ということ を意味しているのだろうか?いいや。ここから言えるのは、すべての 科学者は、いかなる研究も注意深く仮説を立てながら、科学の歴史に ついてよく認識しながら行なわねばならない、ということである。そして、 もっとも優れた人間さえも容易に正道から逸脱させてしまう人間の本質的傾 向を、よく知っておくべきである、ということなのである。ラングミュアの 考察からは、こうしたことも言える:素晴らしい理論を自分自身や他人が誤 りだと証明することにはほとんどまったく関心を示さず、その一方でどんな 反論にもその場限りの仮説を使って言い訳をしようとするなら、仮にそれが 疑似科学でなかったとしても、病的科学の兆 候となる。

関連する項目:ブロンドローとN線 Blondlot and N-rays



参考文献

Cromer, A., "Pathological Science: An Update," Skeptical Inquirer, SUMMER 1993 (vol 17, no. 4).

"Pathological Physics," Physics Today, October 1989.

Copyright 1998
Robert Todd Carroll
Last Updated 11/22/98
日本語化 09/17/99

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