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Robert Todd Carroll

SkepDic 日本語版
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コールド・リーディング
cold reading

コールド・リーディングとは、プロの業師たちが使うテクニックである。被験者を思い通りに操ったり、あるいは被験者のことを``神秘的'' な能力を使って知っているように装うのに使われる。コールド・リーディングは、暗示や甘言といった、ふつうの心理操作の道具以上の効果を与える。コールド・リーディングは、セールスマンや催眠術師、広告屋、信仰治療師、ペテン師、それに、患者を見るとき事実を見るのではなくその状況の中から意味を引き出そうとする傾向の強いセラピストなどが使うものである。私たちは経験から意味を引き出したいという願望によって、すばらしい発見をしてきた。だがこうした願望は、私たちを愚考へと導いてしまうこともある。業師は、人はたとえこじつけやいいかげんなことであっても、教えられたことを通じて理解しようとするものだということを知っているし、そうすれば自分の目標が達せられるということも知っている。人はふつう自己中心的で、自分については非現実的な見解を抱いてしまいがちだ。おまけに、ふつうは自分が何なのかとかどう思ってるのかではなく、どうありたいかとかどうあるべきかといった主張の方を受け入れる。業師たちはこうしたことも知っている。業師の言い分にたいして、あなたがそれを間違いだと否定することもあるだろう。だが業師はあなたの反論にたいしても、平気で答えをすり合わせて、あなたを納得させてしまうだろう。また、人ははずれた質問の数よりも当ててみせた回答の方をより強く憶えているものだが、業師はこのことも知っている。

したがって、すぐれた業師ならまったく見ず知らずの人を読み取って、まるで超能力を持っているかのように見せかけることができる。たとえば、あなたは読心術師バートラム・フォアラーに会ったことはないだろうが、彼はあなたの人となりについて、以下のようなコールド・リーディングをやってのける。

あなたの願望のうちいくつかは、かなり非現実的なもののようです。外向的で人なつこくて社交的なときもありますし、内向的で用心深く無口なときもあります。他人に易々と自分の内面を見せてしまうのは賢いことではないとをいうことをわかっています。ものごとを自分で考えていると自信を持っていて、満足できる証拠もなしに他人の意見を受け入れたりはしません。ある程度 変化と多様性を好み、規則や規制でがんじがらめになるのを嫌います。ときとして、正しい決断をしたのか、正しいことをしたのかと深く悩むことがあります。外面的にはよくしつけられて自己抑制もできていますが、内面的には臆病で不安定なところがあります。

性的なことがらでいくつか問題を抱えています。性格的に弱いところはありますが、日常的にはこうした欠点を克服できています。あなたには、まだ隠された素晴らしい才能がありますが、それを使いこなすところまではいっていません。自分自身を批判的に見ています。あなたは他人に好かれたい、尊敬されたいという強い欲求を持っています。

もうひとつ、こんなのものもある:

あなたに近づくたち人は、あなたから利益を得ています。あなたは、基本にある誠実さが足かせになっているのです。今まであなたが手に入れた多くの機会は、あなたが他人を利用しようとしなかったために失われてしまったのです。あなたは自身の考えを高めるために本や記事を読むのが好きです。事実、すでになんらかの個人営業でもしていない限り、そうすべきでしょう。あなたには人々の問題を理解する無限の力がありますし、彼らに共感することもできます。もっと理解したければ、法的能力を強化してみるとよいでしょう。あなたの正義感はとても強いものです。

あとのものは、占星術師シドニー・オラールからの引用である。彼もあなたと会ったことはないだろうが、それでもこんなにあなたのことをよく知っているのだ![Flim-Flam!, p. 61.] はじめのものはフォアラーがキオスクの星占い本から引用したものだ。

人の意識は、いつでもものごとを選択的にとらえている。私たちは自分が記憶しているデータ、それにめだつデータを選び出すものだ。その理由としては、私たちがそうしたデータをすでに信じていたり、あるいは信じたいからだ、というのがある。また、私たちは経験からものごとを理解するためそうするのだ、というのもあるだろう。私たちが業師に心理操作されてしまうのは、たんにだまされやすいからとか暗示に引っかかりやすいからとかではないし、業師の示すサインやシンボルがあいまいで不明確なものだからというだけでもない。サインがはっきりしていてじゅうぶん懐疑的に見ているときでさえ、私たちは心理操作されてしまうことがあるのだ。事実、サインがはっきりしていて論理的にものごとを見ている場合には、とくに優秀な人の方が心理操作されやすい。業師が示してみせたことがらを頭の中で結びつけるには、論理的に考える必要があるからだ。

コールド・リーディングは、もっぱら悪質な業師によってなされるわけではない。コールド・リーディングのいくつかは、占星術師や筆相学師、タロット占い師、それに超能力を持っていると自分で信じ込んでいる霊能力者によっておこなわれている。こうした人たちは自分たちの正確な``洞察''に、客と同じぐらい影響を受けているのだ。だが、科学者が時として予測に失敗するのと全く同様に、疑似科学者やいんちき療法師も時には正しい答えを出すだろう。このことは憶えておくべきだ。

こうしたコールド・リーディングには、大きく分けて3つの要因があるようだ。1つはディテールの釣りあげだ。霊能者があいまいで暗示的なことをいったとする。たとえば、「私は1月(January)ということばを強く感じている。」ここで肯定的であれ否定的であれ被験者が答えを出したら、霊能者は被験者の答えに自分の答えをすり合わせるのだ。たとえば、もし被験者が「私は1月生まれだ」あるいは「私の母は1月に亡くなった」とか言ったら、霊能者はこう言うのだ「ええ、私には見えていました。」つまり、自分が本当に思っていたことが何であれ、霊能者は自分の言い分を裏づけるようなことを言ってみせるのだ。もし被験者が否定的な返答をしたら、たとえば「1月と言われても、とくに思い当たることはありませんねぇ」などと答えたら、霊能者はこう答えるかもしれない:「そうでしょう、あなたはそうした記憶を抑えつけてるのですよ、私には見えます。このことを思い出したくはないのです。なにか痛々しいことが1月に起きた。そう、私には感じられる。それは腰のあたりに [釣っている] ... ああ今度は心臓に[釣っている]...う〜む頭に痛みが[釣っている]...いや首か[釣っている].」被験者が何も答えない場合、霊能者はこの質問をほうり出してしまえる。霊能者は本当はなにかを見たのだが被験者が出来事を抑圧しているので、くわしいことは双方ともにわからなかった、ということにしてしまうのだ。被験者が上述の「釣り」の最中に積極的な答えをした場合、霊能者は続けてこうのたまうだろう:「今ならはっきり見えます。ええ、心臓の痛みがひどくなっています。」

釣りは本物の技術だし、霊能力を備えていると本気で信じている人がやる方が、いかさま師がやるよりもうまくいくだろう。私もそのことを疑ったりはしない。言行の不一致やいかさま師のこじつけなら、知的な人にはでたらめだとわかるだろう。しかし、誠実だが自己欺瞞に陥っている霊能者にかかると、よほど賢い人でも信じ込まされてしまうのである。

コールド・リーディングのもうひとつの特徴は、最初の主張がすべて、あいまいな供述(「私はまた下のあたりが熱くなってきた」)や質問(「誰か他の人が部屋にいるような感じがしませんか?」)というかたちでなされるという点である。こうした個別の主張は、ほとんど被験者自身が提供しているものだ。

3つめ、霊能者が被験者にたいして誤った答えを出したことは、被験者や観客に忘れ去られてしまう。当たりとみなされる答えだけが記憶されるので、全体としては「わ〜お、霊能者以外にこんなズバズバ当てられるやつがいるもんかい」ということになってしまう。これは反証の抑圧と同じであり、いつも選択的思考とともに霊能者の実演を支配する現象である。これは古くからある心理学の定理と関係しているようだ:人は期待するものを見て、そうでないものを見ようとしない。

関連する項目: その場しのぎの仮説(ad hoc hypotheses)組織的強化(communal reinforcement)確証バイアス(confirmation bias)対照研究(control study)オッカムの剃刀(Occam's razor)プラシーボ効果(the placebo effect)因果の誤り(the post hoc fallacy)選択的思考(selective thinking)自己欺瞞(self-deception)主観的な評価(subjective validation)証言(testimonials)ジェームズ・ヴァン・プラーグ(James Van Praagh)ないものねだり(wishful thinking)



参考文献

Dickson, D.H., & Kelly, I.W. "The 'Barnum effect' in personality assessment: A review of the literature," Psychological Reports, 57, 367-382, (1985).

Hyman, Ray. "'Cold Reading': How to Convince Strangers That You Know All About Them," The Skeptical Inquirer Spring/Summer 1977.

Hyman, Ray. The Elusive Quarry : A Scientific Appraisal of Psychical Research (Prometheus Books, 1989). $33.95

Randi, James. Flim-Flam! (Buffalo, New York: Prometheus Books,1982).$15.16

Copyright 1998
Robert Todd Carroll

日本語化 01/31/00

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