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Robert Todd Carroll

SkepDic 日本語版
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超越瞑想
Transcendental Meditation (TM)


“マハリシ経営大学の学生として、あなたは超越意識を経験するとき、あなたは生命と宇宙進化のの基本となる意識や知性の大洋を体験しているのだということを発見します。”

“意識、肉体、行動、そして環境にたいする超越瞑想(TM)の有益性は、世界33ヶ国にある200以上の大学や研究機関でおこなわれた500以上の科学研究に描かれています。” [マハリシ経営大学の超越瞑想(TM)プログラム]

これは笑える主張だ。なぜなら“超越意識”は科学的概念ではなく形而上学的概念だからだ。


超越瞑想(TM)はヒンドゥー教の一連の瞑想法で、マハリシ・マヘシ・ヨギによって西洋世界にもたらされた。TM(このTMという語は商標化と特許化がなされているのだ!)は実践家に、“悟り(enlightenment)”あるいは“至福”として特徴づけられる、特殊な意識状態をもたらすとされている。TMの手法にはマントラ鑑賞が含まれている。マントラは特別な表現芸術とされており、それはヒンドゥー教の神の名にほかならないことが多い。

TMムーブメントは1956年のインドで始まり、今では世界中に広まっている。信者数は400万人以上いると主張されている。もっとも、実際のTM信者の数は、おそらくこれよりずっと少ないだろう。多くの人がTMを知ることになったのは、60年代末にマハリシに帰依したビートルズによってである。ビートルズは、自分たちが望んだのは富と名声がすべてではないと気づき、他の多くと同様に、幸福と満足へいたる方法を求めて東洋へ向かったのだろう。西洋にいる者の多くが、ドラッグや、私たちの文化的価値を支配している富と権力と名声の強調を嫌ってインドへ向かった。ドラッグはハイにしてくれるが、ヤク中の奴隷へ堕ちてしまうといった不快な副作用をもつことが多い。瞑想は、どんなドラッグよりもはるかに高いハイを与えてくれるし、ストレスによる消耗の代わりに、爽快感といった望ましい副作用も与えてくれる。

TMのおもだった主張の1つは、TMはストレス克服のための科学的手段である、というものである。TMは“創造的知性の科学”にもとづいていると主張しており、“人生のあらゆる分野で成功理に経営をおこなうための多岐にわたる学問的方法論”を提供している、アイオワ州フェアフィールドにある マハリシ経営大学(元はマハリシ国際大学)で学士資格を取得することもできる。またTMは、完全な意識に見合う完全な肉体を望む人たちに向けた、さまざまな健康商品や美容商品の基礎ともなっている。

TMの勧誘文書は、TMの驚異を“科学的に”示してみせる図表でいっぱいだ。TM が人を新たな意識のステージへといざなうということを暗示するために、代謝率、酸素消費速度、身体からの二酸化炭素生成量、ホルモン生成量、脳波などが計測され、図表となり、視覚的に主張されている。TMの‘科学者’のほとんどは対照実験などやらないし、実際に実験計画とその調製については超心理学者のほとんどとたいして変わりない。つまり、たとえいんちきではないとしても無能だというのが真相である。あるいは、研究は些細などうでもよいことがらについてのものだ:あなただって、完全にリラックスすることで同じ生理学的結果を得ることができるのである。ところがTM信者によると、TMは“リラックスや休息とは明らかに異なる神経生理学的”信号を生じることが検証によって示された、ということになる。[ジュディー・スタイン, 私信] だが批判者はこうした主張には同意しないだろうし、TMが健康に有害だと示唆する別の研究を引用するだろう。たとえば、1980年のドイツの研究では、長期瞑想者の4 分の3が有害な健康障害を経験したことを見い出している。この研究から何らかの強い結論を描き出すには注意が必要だが、しかしそれは同様な批判者のグループが小さいからだけでなく、TMに惹きつけられるのはストレスによって消耗して救済を求めている人たちだからだ。したがって、瞑想のあと肉体的あるいは心理的問題を抱えた人の多くは、瞑想を始める以前からこうした問題を抱えていたかもしれないのだ。ゆえに、人によっては瞑想が問題を起こすわけではないかもしれない。だが瞑想は人を救済してもいないのだが。

おそらくTM信者の最もうそくさい主張は、空を飛べるというものだ--ああ、本当は飛ぶわけではなく、浮かぶのだ。TMは当初、空中浮揚によって拡大した。TM信者のグループがハスの葉の上で跳ねて、飛んでいると主張しているのを、あなたはテレビのニュースで見たことがあるかもしれない。当然この主張は簡単に反証され、今ではTM信者は飛べるとか浮かべるなど主張しない。もっとも、信者の中にはTMをつうじて透明化をはじめとするさまざまな超能力を使えると主張する者もいる。これは驚くべきことではない。というのも、TMは結局のところ宗教だからだ。そして多くはおもに健康に有益だという主張からTMに関心を寄せる一方で、多くは“神”やその他あなたが究極の実在と呼びたいものを見い出すために、TMに入信しているのだ。

TMが主張している実演可能な超能力の1つは、“マハリシ効果”である。これを、いわば科学的に実演可能な事実だともされている:“集団瞑想は根本的で統合的な物理場によってに変化を生じさせ、こうした変化は社会に放射され、より善い方向へを社会に影響を及ぼす。”[バリー・マルコフスキー] あるTM の研究は、マハリシ効果はアイオワ州フェアフィールドにあるマハリシ大学付近の穀物生産を増加させ、また一方で犯罪や事故の減少に関与していた、などと主張した。ジェームズ・ランディはフェアチャイルド警察署、アイオワ農業局、それに陸運局に問い合わせて、このすばらしい事実を発表したTM科学者のデータが捏造されたものだということを見い出した。*

TMは、近年みられる他の宗教グループと同様に、政治に深く関与している。自然の法則党(The Natural Law Party)は、形而上学的教えと実践をアメリカの生活のすみずみに浸透させようとするTMの試みである:そこには教育、健康、経済、監獄の改善、エネルギー、環境...などが含まれ、健康食にたいする政策まである。

TMを公立学校に浸透させようとする試みもあった。たとえば1995年3月1日付のサクラメント・ビー紙(p. B4)は、カリフォルニア州パロアルトにあるTMプログラムのディレクター ジョン・ブラックが、そこから何マイルか行ったところにあるサンホセの職員に対し、学校でTMを教えさせるよう申し入れをおこなったことを伝えている。教室での瞑想はテストの得点を向上させ、未成年の妊娠を減らし、校内での暴力やドラッグを減らし、教師の燃え尽き症候群も減らす、ブラックはそう主張している。この力強いメッセージは、“私たちの学校の危機を救う”と題した、教師と瞑想家のための無料フォーラムでなされたものだ。

ジョン・ブラックのような連中が、こうしたことすべてがTMでできると本当に信じているというのは事実かもしれない。だが、連中は学校へTMを導入することによってこうしたすばらしい目標を達成できるという、その根拠をまったく持っていないのだ。ジョン・ブラック曰く、“学校の危機とは、人々がストレスで消耗しているということなのです。”彼は正しいのかもしれないが、学校の教職員は賢明にも彼の申し入れを受け入れなかった。たとえマハリシ・マヘシ・ヨギ自身が“サンホセの犯罪を撲滅するための証明されたプログラム”を年間たったの5,580万ドルで提供すると述べている新聞広告を出しても、市役所は受け入れなかった。同様な広告はいくつもの都市でみられる。広告を真に受ける者はいない。

市役所など信用できない、なんて誰が言ったのだろう!


*これらのウソを報告した科学者とは、物理学の博士号を持っており、MIUに雇われていたと主張するロバート・ラビノフ博士である。James Randi, Flim-Flam! (Buffalo, New York: Prometheus Books, 1982), pp. 99-108.参照。

だがジュディー・スタインは、ラビノフを以下のとおり擁護している:“ラビノフの研究を無効だ(たぶんそうだと思うけど)と決めつけようがしまいが、いずれにせよ、マハリシ効果に関する主張と研究を、彼の研究にもとづいて判断することはできませんよ。彼はゲームのほんの最初に出てきた雑魚にすぎませんし、TM研究の水準は当時と比べて格段に向上してるんですから。”

それに私はあなたが“ウソ(lie)”という語を使う、その用法についても疑問を感じます。ほとんどの人にとって、この語は自己欺瞞や無知にもとづく誤りというよりも、意図的な欺瞞という意味で受け取られますから。”[私信]

私はラビノフであれ、彼にデータを渡した人間であれ、誰かがウソをついた、という意味で使ったのです。いずれにせよ、TM科学者はウソつきだと糾弾したのはランディが最初というわけではありません。それにいままで調べた限り、私はTMの科学者であれ、どんな科学者であれ、どんなことがらについてであれ、研究を形而上学的な教義の裏づけに使う連中の仕事は信用しません。


参考文献

読者のコメント

Randi, James. Flim-Flam! (Buffalo, New York: Prometheus Books, 1982), chapter 5, "The Giggling Guru: A Matter of Levity".

Copyright 1998
Robert Todd Carroll
Last Updated 11/23/98
日本語化 05/03/00

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