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Robert Todd Carroll

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神知学
theosophy


“私たちは人が閃きとともに獲得する預言が、宇宙霊の元では本源的にたったひとつでどれも同一のものであり、私たちの“霊的自我”こそが事実上至高の存在だと仮定していています。しかし、霊的自我は物理的実体に妨げられているため、その知を示すことができないのだと仮定しています。では、こうした障害物を取り除けば、つまり霊の自立した活動と意識のために、深い睡眠やトランス状態や、あるいは病という形で物理的な肉体を停止させれば、内的自我の働きはいっそう活発になるでしょう。私たちは、真に素晴らしい高次の霊を、このように説明します。そこには無謬の知性と知識があるのです。[マダム・ブラバツキー]”

“私たちは肉体という牢獄に閉じ込められている。まるで殻に閉じ込められた牡蛎のように。 [ソクラテス、プラトンのパイドロス]”

哲学者にとって肉体は“障害物であり、知の獲得を目指す魂を妨げている...”

“...肉体という鎖から魂を解き放つことなしに、浄化などありえようか?” [ソクラテス、プラトンのパイドン]


神知学、あるいは接神論 (divine wisdom) とは、神の様態を啓示ではなく直観によって知ることができると信じる哲学者が唱えてきた神秘主義である。あるいは、神秘思想やオカルト哲学に傾倒して古代思想の核心を知ったと安易に主張する好事家のよせあつめ密教思想である。

神知学的神秘主義の系譜はプラトン(c. 427-347 BCE)、プロティノス (204/5-270)ら新プラトン主義者、そしてまたヤコブ・ベーメ(1575-1624)まで遡る。神知学的神秘主義は、19世紀ドイツ観念論のもとで西洋哲学の爆発的発展を経験した。神秘主義の伝統は、インド哲学で見られるように多くの非西洋哲学のもとでも強固な要素となっている。

神知学の密教思想はヘレナ・ペトローブナ・ブラバツキー(1831-1891)からはじまった。マダム・ブラバツキーの名で知られる彼女は、1875年ニューヨークに創立された神知学教会の共同創立者の一人である。ブラバツキーによる神知学の密教的要素はいくつもの哲学的宗教的伝統に多くを負っている;彼女の神知学の中にはゾロアスター教ヒンドゥー教グノーシス主義マニ教カバラなどの要素が取り込まれている。

彼女を最も痛烈に批判する人々は、マダム・ブラバツキーこそ“歴史上最も狡猾で、そして興味深い天才的詐欺師”と見なしている。彼女の信奉者は、彼女を聖人であり天才だと見なしている。[こうした人たちは、彼女が科学的訓練や科学者の助けを一切借りることなく、透視あるいは直観のみによって、光の真の本質を発見したのだと主張している。]こうした特徴は矛盾するわけではないため、彼女は詐欺師であると同時に神聖なる天才として生まれついたのだと言うことができる。ブラバツキーについて信じられていることがらは、その多くが彼女自身か彼女の信奉者、あるいは彼女の敵がかたったものである。しかしいずれにせよ、いくつか本当らしいことがらもある。彼女が実に広範囲を旅して、さらに読書を重ねたことは明らかなようだ。ブラバツキーはチベットとインドで“導師”(聖人達人)から、とりわけアストラル体をもつモルヤ師やクー・ホーミ師からオカルトの神秘を学ぶために何年も費やしたと主張している。この達人たちはヒマラヤ、エジプト、チベットその他の秘境に籠っているといわれている。彼らはその超自然的霊能力で知られ、神秘に包まれた“古代の知恵”の聖なる守護者なのである。彼らは神ではないとブラバツキーは言うが、死を避けられない私たちふつうの人間よりは、はるかに進化した存在だという。(ブラバツキーによれば、生物の進化は霊的プロセスなのである。)彼らの目標は人類すべてを偉大なる白き兄弟のもとに統合することだが、その割には世界の果てに籠ったきりで、私たちふつうの人間とほとんどコンタクトをとらない。

ブラバツキーのいかさま

ブラバツキーは明らかに人をひきつける魅力を備えていたようだ。彼女は心霊主義者のトリックを知っていた。エジプトでは心霊主義者の下で働いていたし、当初はトリックを使って人をだまし、超能力を信じさせるのに神知学協会を使った。自分の信憑性を高めるためにティーカップと皿を実体化してみせたり、導師からの直筆の手紙を見せたりした。彼女は確かに超常体験をしたと主張していたが、彼女自身が本当に透視能力や霊能力があると信じていたかどうか、それは私にはわからない。

1875年、彼女は弁護士で作家のヘンリー・スチール・オルコット、W・Q・ジャッジとともに、ニューヨークで神知学協会を設立した。オルコットは1874年、バーモント州でエディ兄弟の心霊主義を調査しており、彼女はそこでオルコットと知り合った。彼らは互いに“心をひかれ合い”、一緒に協会を設立したのである。その数年後、ブラバツキーとオルコットは二人でインドへ赴き、そこで神知学本部を設立した。1885年、彼女は導師に教わった実体化の詐欺を行なったいう容疑をかけられてインドを去った。1888年にはヨーロッパに戻り、主著 奥義 (The Secret Doctrine) を出版した。この本は“...科学と古代の知恵、そして人類文化を、...宇宙論、歴史、宗教、象徴主義を通じて和解させる試みである。”(Ellwood) ブラバツキー自身によると、“神知学協会の...主目的はすべての宗教と宗派そして国家を、永遠の真理にもとづく一般倫理によって和解させることにある。”

彼女はキリスト教やヒンドゥー教のような宗教を否定したわけではないが、すべての宗教には顕教と密教の伝統があると主張した。顕教の伝統は宗教によって互いに異なるが、密教の教理はあらゆる宗教で同じだとした。彼女はこの共有された密教を広めているのだと主張した。また彼女は最も古い神知学集団を擁していたにもかかわらず、最期には“死者の魂は地球には戻らない -- ごくまれな例外を除いては...”と主張した。

神知学にそれほどの伝統があって、しかもそれほど普遍的な存在なら、ではなぜ神知学は1875年まで誰にも知られることがなかったのだろう。そういう疑問を抱く人もいるだろう。マダムは答を用意していた。我々人類は、“感覚で得られるもの”にばかり没頭して“教条主義や儀式偏重によって死んだ言葉”の奴隷となっていて、そのため“真の霊的洞察”を失ってしまっているというのだ。“しかし最も重要な原因は”、彼女が言うには“真の神知学が今まで秘密とされてきたという事実にある”。 神知学が秘密とされてきたのにはいくつか理由があった。“...まず第1に、ふつう人間は本性として頑迷かつ自己中心的で、人はいつも隣人や同族を傷つけようとする個人的願望から喜びを得ようとします。こうした人々を信用して聖なる秘密を教えるに値しません。第2に、こうした人間に聖なる秘密を教えても、きっとそれを汚してしまうことでしょう。いままで至高の真実やシンボルのほとんどが曲解され、擬人的で具体的な彫刻などへと変造されてしまったのは、このためです--つまり、善き理念は盲目的崇拝へと矮小化されてしまったのです。”[神知学への鍵 (The Key to Theosophy)] これを読んで、神知学の秘密が19世紀になってから人々の前に現れた理由を不思議に思う人もいるかもしれない。つまり19世紀になって人間は秘密を知るレベルに達したのだろうか。実際には、19世紀当時の人間がわずかでも頑迷さや自己中心性や物質主義や不道徳さを改めて、以前よりましになった、などといったら、社会史の学者はみな仰天するに違いない。

古代の知恵

神知学者が分け与えると約束している“古代の知恵”とはいったい何なのだろうか?この知恵とは、ヒンドゥー、エジプト、グノーシス派その他異民族の経典・教義や、新プラトン主義やアトランティス伝説などの折衷にほかならない。これらは、秘密とか特別とか、霊、啓示、宇宙、ビジョン、ダイナミクス、黄金、イシス神、神秘、そして導師などといったことばを聞いて喜ぶような連中にとっては、哲学や神話なのだ。これらは世界の邪悪なものについての説明を与えてくれる一方で、こうした邪悪なもの、とりわけ肉体からの脱却を約束してくれるのだ。彼らは、霊的進化が遅々として進まないのは、すべて“マター”なる恐るべき存在のせいだと主張している。彼らは超自然的理由から奇跡が現実に起きることを説明しながら神性の力を約束し、信者を霊的宇宙の中へ引きずり込む。彼らは道徳的な目標をもつ統合を約束する一方で、選民意識にもとづいた孤立した集団へのメンバーシップへといざなう。しかしおそらく、こうした秘密結社が持つ最も大きな魅力は、学校に行かなくてもよくなり、カントを読む必要もなくなるということだ。

しかしながら、ここで必要とされているのは、オカルトへの強い嗜好性なのだ。ブラバツキーによるとこれは危険な代物なのだが、神知学が手助けになるのだそうだ。

自然界に隠された聖なる徴の、その本当の意味を知らなければ、人は魂の持つ力を誤ってしまい、天空におわす高位の存在、つまり善なる精霊(プラトン学派のセウルギア信奉者たちにとっての神)と霊的・精神的に通じあうかわりに、無意識に悪の方へ、つまり人間のまわりに潜んで永遠に罪と悪徳を創造する暗黒の力へと引き寄せられてしまうのです。そしてセウルギア(白魔法)からゲーシア(黒魔法や呪術)へと堕ちてしまうのです。[What Is Theosophy?]

女史によると、“... 本物の神知論者でないかぎり、真のオカルト者になることはできません;でなければ、その人はただの黒魔術師でしかありません、自分でそのことを意識しているかどうかは知りませんけれど。”彼女はメスメル作用催眠術も、オカルトの技術によるものだと考えていた。

オカルト科学は百科事典に書かれているような、“中世におこなわれた空想上の科学で、錬金術や魔術、霊能術、占星術など、オカルト的事物や超自然的力がなんらかの影響を与えるという仮説にもとづいている”ものではありません。なぜなら、これらは現実に存在し、実用的で、しかも危険なものだからです。オカルト科学は自然界の隠された潜在能力を明かし、さらに“人間に秘められたもの”についてさらなる開発を進め、したがって無知なる常人たちより高い位置にたちます。催眠術は今では一般的なものとなり、まじめな科学的探究のテーマとなっていますが、これこそオカルト科学の好例でしょう。催眠術の力は、メスメル効果の処置の中で、まったくの偶然に発見されたのです;そして今では、有能な催眠術師なら、人を無意識のうちに操ったり、あるいは自分の身代わりとして騙したり、犯罪を犯させたりと、何でもできるのです。もしこうした力が良からぬ人たちの手に落ちたら、おそろしいことではないでしょうか?いいですか、これはオカルトにかかわる問題の、ごく一部にすぎないのです。[The Key to Theosophy]

ブラバツキーは聖なる秘密を、その一端であれ理解していたのかもしれないが、彼女が催眠術やメスメル作用の実態を理解していたとは、私は思わない。しかしながら、彼女は“伝説の幻術師と、現代の催眠術師や霊能師は、方法に違いはあれ基本的に同じものだ”と述べている。この部分については、彼女の主張は正しいと思う。[What Is Theosophy?] これらいわゆる“トランス”状態は社会的役割という要因によって影響され、またニコラス・P・スパーノスなど現代の心理学者によって議論されてはいるが、ある特殊な意識状態にすぎないのだ。

賞賛するのは誰か?

神知学は人類の救済として広く認知されているわけではないが、読者の皆さんはそれがなぜなのか、不思議に思うことだろう。人によっては、神知学は自身を周囲から孤立させてしまうものかもしれない。ブラバツキー女史はいんちきヒンドゥー導師の手助けによって、幼少期の自分の姿を見たと主張した。その導師は、しまいにはハイドパークで物体化して、彼女のグルとなり、助言者となった。多くの人たちは、ロシア貴婦人のこうした主張を真剣に受け止めようとはしない。懐疑論者の多くは、彼女の高貴な出自や、その後サーカス団員や霊媒師の助手として雇われたことをあざ笑っているし、さらに、動機がどれほど高邁なものであれ、彼女が詐欺にかかわっていたことを深刻に受け止めている。それ以外の人たちにとっては、神知学は私たちをのけ者にする教義だろう。ある道徳的目標が定められていて、しかも地球の平和や男女の善き意志が語られているにもかかわらず、アストラル体や霊的人種の進化、アーリア人、超常的力、アトランティス、いわゆる古代の知恵などには、いささか問題がある。人によっては、神知学は神の顕現や全質変化や、三位一体よりはましなものに映るかもしれない。だが懐疑論者にとって神知学は形而上学的な戯言でしかない。おしまいに、信者以外は神知学に必要とされる自己の鍛錬によって追い払われるだろう。

...全員にとって最も大事な約束事は、個人の人格を捨て去ることです -- つまり、誓約した会員は完全なる利他主義者とならねばいけません。利己的な考えを抱いてはならないのです。自分の虚栄心やプライドを忘れ、秘儀の会の同輩たちに対するのに加えて、被造物たる人間諸氏の善なることに思いをいたさねばなりません。もし秘儀の導きから利益を得たいなら、会員は人としての義務を全うしつつ、すべてにたいする禁欲の生活を、自己の放棄と厳しい道徳の生活をおこなわねばなりません。

“...メンバーは全員、博愛主義者か、学者つまりアーリア人やその他の古代文献の探究者、あるいは霊能力の研究者でなければいけません。”[The Key to Theosophy]

アストラル人にとっては一大観光名所となっているアトランティスの秘儀によってマハトマ(大いなる魂)や古代の知恵への道を修め、さらには人類を霊的に進化した偉大なる兄弟へと統一するために闘うのは、さぞ大変な人生だろう。おまけに、おそらくその秘密の教義には一貫性も妥当性もない。というのも、このグループはマダムの死後分裂し、ついには雲散霧消してしまったようだからだ。形而上学的な集まりは世界中に存在するが、人類みな兄弟という彼女の夢は依然として夢のままである。

関連する項目:アカシック・レコード (Akashic record)心霊主義 (spiritualism)ルドルフ・シュタイナー (Rudloph Steiner)



参考文献

Ellwood, Robert S. "Theosophy," in The Encyclopedia of the Paranormal edited by Gordon Stein (Buffalo, N.Y.: Prometheus Books, 1996), pp.759-766. $104.95

Randi, James. An Encyclopedia of Claims, Frauds, and Hoaxes of the Occult and Supernatural (N.Y.: St. Martin's Press, 1995). $17.47

Washington, Peter. Madame Blavatsky's Baboon: A History of the Mystics, Mediums, and Misfits Who Brought Spiritualism to America (Schocken Books, 1996). $11.20
review by a theosophist 

Copyright 1998
Robert Todd Carroll
Last Updated 10/30/98
日本語化 01/20/00

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