sd.gif (2133 bytes)
Robert Todd Carroll

SkepDic 日本語版


懐疑論者の避難所

ホントだったらすごすぎるについて
vertline.gif (1078 bytes) Too Good to Be True

トラスターコンピュータ音声ストレス分析器
Truster (DontLieToMe.com) & Computer Voice Stress Analyzer

トラスターは全コンピュータ化音声ストレス分析器で、真実を簡単に見分けることができます。”

ホントだったらすごすぎる、でしょ?最高なのは、こいつがだったの89ドルだってことだ。広告によると、こいつは189ドルだったらしい。競合他社によると、トラスターは以前は2500ドルで売られていた。クリントン大統領が“例の女”モニカ・ルインスキーと性的関係を持ったことを否定した事件を分析した、と最新プレスリリースで発表したせいで、経営は完全に落ち込んでしまったのかもしれない。トラスターによれば、クリントンは本当のことを言っていたそうだ。

音声ストレス分析器とはいかなるものか、気になるでしょう?これは、ヒトの音声--周波数の変調--を測定する器械だ。ストレスを直接検知できる器械などないし、ストレスがウソや偽証、吃音や恐怖感や、その他の感情や精神状態のせいだと判断できる器械すら存在しない。測定者が“微細な振幅”とよぶ周波数の変調は、人間が解釈しなければならないのだ。分析はこの器械がやるのではなく、調査する人間がやっているのだ。

トラスターはイスラエルのマク・シェベット製だ。だが、この音声ストレス分析器はアメリカの司法機関が選んだものではない。司法機関御用達の栄誉にあずかっているのは、フロリダ州ウェストパームビーチにある、有名なナショナル・インスティチュート・フォー・トゥルース・ベリフィケーション社(NITV)である。NITV社はコンピュータ音声ストレス分析器Computer Voice Stress Analyzer, CVSA)を9250ドルで販売している。また、NITV社は6日間の講習会についても、一人あたり1215ドルを徴収している。NITV社は、同社の機器は800以上の司法機関で使われていると主張している。CVSAは、持ち歩きが簡単便利なように、ラップトップ用ソフトウェアとセットになったデジタル機器だ。さらにこの器械は、被験者が居合わせていなくても測定できるように、テープレコーダーと接続できるようにもなっている。このコンピュータは“これらの音声周波数を処理して、音声パターンをグラフィカルに表示します。”表示されるグラフは印刷できるようにもなっている。

この音声ストレス分析器は、どの程度正確なのだろうか?ベイカー・アソシエーツのゲリー・ベイカーによると、

司法・医学・精神医学・心理学・軍事・経営・保安・薬理学・政府の各分野における専門家による何百もの研究では、その96%以上がVSAの有効性・信頼性・正確性を一貫して示しています。*

残念ながら、ベイカー氏はこれらの研究を1つも例として挙げていないため、私にはこれらを引用することができない。だがこうした分野の専門家が上述のコメントを走査したところ、このコメントはおそらくウソだという結果が出ている。

では、このウソ発見器の広告はどれだけウソまみれなのだろうか?NITVは以下のごとく主張している。

ポリグラフ(ウソ発見器)と違ってドラッグが試験の結果には影響を及ぼすことはありませんし、ポリグラフではひんぱんに発生して“判定不能”な結果を示すことが多い相反する測定結果は、この器械では発生したことはありません。*

VSAが“判定不能”なる測定結果を示さないのは事実だ。だが調査する人間には、3つの選択肢が与えられる。試験官は、“ウソ発見”、“ウソ発見されず”、あるいは“判断保留-さらに試験が必要”と結論づけなければならないのだ。技術的には、判断保留は判断不能と同じことではない。だが結果は同じことなのだ:被験者は真贋テストに合格も不合格もしていないし、結果として不完全というのと同じことだからだ。

言うまでもなく、NITVはウェイド・クアトロバウムが彼のクアドロ検出器売り込んだときと同様に、この新型デバイスを司法関係者に易々と売り込むことができた。私たちは再び問わねばならない:司法関係者は、とりわけこうした疑似科学製品については、なぜこれほど騙されやすいのだろうか?その場しのぎのいい加減なテストで判定されたウソやホントに騙されているのは、べつに司法関係者だけではない、というのが本当のところだ。こうした機器は、小売販売会社や法律事務所、中小企業、大企業、それに軍でも使われている。こうした幅広いユーザー層が存在することはシニニズムの現れであり、器械の科学的有効性を誠実に信頼しているからというよりも、こうした器械の検査対象となる人たちへの見識が低いせいだ、そう見る人もいる。

どの事例で観察されることがらも、同じぐらいもっともらしいいくつもの要因によって生じ得るため、ウソをついて生じるストレスによって起こる“微細な振幅”を識別する方法を裏づける理論など存在し得ない。これはどんな科学者でも解ることだろう、そう言う人もいるかもしれない。このような音声の変調は、便秘や恐怖心、テストに対する不安などを抱える人でも、同じように表れるからだ。何らかの音声変調をウソをついているせいだと捜査官が判定しても、必然性の判定は器械からの出力以外の何か他のものにもとづいていなければならない。では試験官の判定材料とは何だろうか?ボディー・ランゲージ?ブルーセンス?間違いなく、そういう場合もあるだろう。だがウソ発見器にかけられる多くの人はたいていテストの有効性を信じており、自白がこうした器械の人気を高めるのに一役買ってしまうのを恐れている場合が多いのだ。この見解は、自分たちの器械がどれだけ事件を解決したかを示すためにNITV が提供している証拠でも裏づけられている。どんな場合でも、容疑者は少なくともCVSAのテストに直面すると、自白することになるというのだ。

Copyright 2000
Robert Todd Carroll
Last updated 02/12/00
日本語化 05/08/00

larrow.gif (1051 bytes) The Skeptic's Refuge

More Too Good to Be True Opportunities rarrow.gif (1048 bytes)