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Robert Todd Carroll

SkepDic 日本語版
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ラムザ、別名 J・Z・ナイト
Ramtha aka J.Z. Knight

ラムザ:アトランティスからやって来たクロマニヨンの戦士。ふだんはナイトに変装するのダ。ラムザは年齢35,000歳の戦士の精霊で、1977 年、ワシントン州タコマに住む女性のキッチンに現れた。J・Z・ナイトは自身をラムザのチャネラーだと主張している。この素敵なブロンドの女性はトランス状態に入ったように見せかけて、中世かエリザベス一世調の時代がかった英語を使って、のどから絞り出したようなハスキーボイスで話をする。ナイト女史は数千人もの信奉者を擁しており、セミナー(1回1000ドル)やラムザ啓示学校でラムザを演じ、そしてテープや書籍、アクセサリの販売をつうじて何百万ドルも稼いでいる [Clark and Gallo]。彼女には催眠術の能力があるに違いない。そうでなければ普通の人は、自分が冷たく汚れた出口のない迷宮の中で目隠しされて無為に時を費やしているのだ、などと彼女に言われても合理的だなんて思わないだろうし、自己の充足の助けにすることもないだろう。信奉者たちは`虚心'を求めて暗やみにいるのだ。

J・Z・ナイトはかつて“霊的に安らぎのない”日々を送っていたが、今は違うそうだ。アトランティスからレムリアを通ってやってきたラムザの啓示を受けているからだ。彼女によると、ラムザが最初に彼女の前に現れたのは、彼女がビジネススクールの学生でUFOを見るなど超常体験をした頃だったという。まるで、学生時代にL・ロン・ハバードやエドガー・ケイシーを読んでいたのではないかという風に聞こえる。この偉大な戦士は都合良くJ・Z・ナイトのスケジュールに合わせて彼女の身体を乗っ取り、そして彼女の口を通じて語りかける。彼女は自分の霊的パートナーと、よほどウマが合うのに違いない。なにしろ彼女の望み通りに現れてくれるのだから。ラムザがなぜJ・Z・ナイトを選んだのかは明らかでない。だが、なぜJ・Z・ナイトがラムザを選んだのかは明白だ。でなければ、ただの欺瞞にすぎない。

ナイトは自分が過去にいくつもの前世を生きてきたと主張している。もしそうなら、なぜ彼女はラムザを必要としたのか、不思議に思うだろう:彼女は以前そこにいて、彼女自身で事をなしたのだから。それほど何度も転生を繰り返してきたのなら、彼女は自分自身で語ることができるはずなのだ! だがナイトが言うには、私たちは脳の10%しか使っていないのだそうだ。ラムザが彼女の体を借りて現れるのには、おそらくこうした理由があるのだろう。私たち人間が脳の10% しか使っていないというのはニューエイジの間でポピュラーな主張だが、その根拠はいったいどこにあるのだろうか? ニューロンすべてを一度に使うと破滅的なことが起きるというが、この主張は神経科学の基本的事実に基づいたものだろうか?脳の10%しか使っていないという主張がいったい何を意味するのか私には良く理解できないのだが、もし脳を構成するニューロン分画のうち10%しか知覚や概念形成や夢の生成などに使われていないという意味なら、この主張はまったく正しいし、同時に、何の意味もないくだらない話にすぎない。いずれにせよ、脳細胞はいつもごくわずかな分画しか使われていないと聞けば、彼女はたいへん喜ぶにちがいない:なにしろ、脳卒中も発狂もせずにすむということだからだ。

ナイトは、霊または意識が思考を脳に吸収して“ホログラフィック的に”構築することによって、“思考をデザインする”ことができるとも主張している。これらの思考が実生活に影響を与えうるというのである。もしこれが、私がここで書いたとおりの意味だとしたら、ナイト女史は明らかであるということがどういうことかについての概念を、はるかな高みへと持ち去ってしまっていることになる:彼女は念じたことがそのまま現実生活で実現するということを発見したことになるのだ!しかし彼女は、別のところでは魂と肉体についてよくある戯言も書いている。曰く、魂は肉体を、服を着るようにまとうのだ:したがって、1着の服を2人で着ることができるのと同じように、2つの魂が1つの肉体に存在してもおかしくないのだ。おっしゃるとおり。そしてこの論法でいけば、肉体にある魂はべつに3つでも4つでも、400個でもかまわないということになるのだ。さいわい、私たちほとんどの人間にとって霊は個人に帰属するものであり、よその霊が肉体に入り込んできたりはしないものなのだ。そうでなければ、私たちは研究会やカルトに入って、三角頭巾をかぶってエドガー・ケイシーを読むところから始めなければならなくなるだろう。

ナイトはその著書で神経学の知見を書き換えるだけでなく、考古学や歴史まで書き換えている。この世界の35,000年前は、学者たちが言うようなものとは全然違うというのだ。私たちは洞くつに壁画を描いた原始的な狩猟採集民などではなかった。そうではなく、当時は非常に発達した文明があったというのだ。そんな証拠はどこにもないが、ナイトにとってはどうでもいい話だ。というのも、証拠とする本も彼女が書いているからだ。たとえビジョンや幻覚や妄想であっても、証拠は示されているのだ。どうやら、証拠など気ままなでっち上げでもかまわないらしい。そういうわけで、太平洋のレムリアから最初にラムザがやってきたという話を聞いた時点で、古代文明について学者にきいて理解しようなどとは思わないでほしい。世界中の学者たちはレムリア大陸なんておとぎ話の中にしか存在しないと信じ込んでいるのだ。レムリア人が恐竜のいた時代から優れた文明を築いていたと言われても、証明する必要を気に病むことなどないのだ。証拠などないのだから。恐竜の時代に存在した哺乳類は、原始的なキツネザル(レムール)のような動物だけで、ヒト科の動物など存在しなかったのだ。おそらく、レムリア人は本当はキツネザルだったのだろう。いや、レムリア人は“北極星の彼方からやってきた”というのだから、これで人がなぜ夜空の星を飽くことなく見つめ続けてきたのか、説明できるというものだ。

だがレムリア人がどんなに優れていようと、さすがにアトランティスには及ばない。ナイトが語るラムザのアトランティス物語はあまりに異様で、筆舌に尽くし難い。とりあえずまともに聞くことができるのは、L・ロン・ハバードが語るものだけだ。ここで、ラムザはエドガー・ケイシーのもとを訪れてその後去った戦士だとしよう。彼女の物語には、今日の世界に不満を抱いている人たちには、強く訴えかけるものがある。昔の方が良かったに違いない。昔はもっと安全だったし、人間はもっと高貴だったはずだ。こうしたメッセージは、とりわけ現代社会が病的な衣をまとっていると感じている人たちにたいして、訴えかけるものがあるのだ。誰もあなたに耳を傾けたりはしない。誰もあなたのことなど気にかけたりはしない。だが神はあなたを愛し、あなたも神を愛する。そして神の声を聞くことは、なんと善きことか。あなたは貧しかっただろうが、今は裕福だ。弱かっただろうが、今は強い。驚くべきことだ、祝福あれ!

ラムザはキリストと同じように、自己との戦いをも含めた幾多の戦いを制覇したあと、天空から降りてきた。彼は再び戻ると言った。そして1977年、ピラミッド・パワーに熱中していたナイトのもとにやってきて、約束を果たしたのだ。彼女はおもちゃのピラミッドを頭の上に載せて、はからずも生きた死者の地に舞い戻ってきたラムザの信号らしきものを捉えたのだ。

そして彼は、私を見て言いました:“愛する女よ。私は覚者ラムザだ。私はお前を深淵から救済するためにやってきた。” そして、そう、あなたならどうします? 私はわけがわかりませんでした。だって、私はただの人だもの。いすの下にちゃんと床があるかどうか、確かめてみました。そしたら、彼は言いました:“これは深淵の限界と呼ばれている”、“そして私はここにいる。我々はともに大いなる仕事を成し遂げるのだ。”

というわけで、この賢者の最初の建言は、深淵の限界には気をつけろ!といったものだ。じつはナイトの彼氏も深淵に落ちるところだったのだ。なにしろ彼もその場所にいたのだから。だが彼は、ピラミッドと方位磁針を並べるのに忙しくて、ラムザの姿を見つけることはできなかったのだ。彼はしかし、ラムザの磁的な魅力を感じてはいたのだ;というのも、ナイトによると(彼女の言い分を信用するほかにないじゃないか??)、方位磁石の針は狂ったようにぐるぐる回っていたというのだから。というわけで、この日、件のピラミッドは正しく並べられてはいなかったのだ、私はそう判断する。それに、このピラミッド係の男(ちなみにこいつは歯医者だ)はキッチンの空気が“イオン化”するのを見ている。(彼女の描写から判断するなら、この男は一酸化二窒素かペイヨーテでも使ったのかもしれない。)

[訳注]一酸化二窒素は、歯科では麻酔に用いられる。笑気ガスといった方がわかりやすいかもしれない。ちなみにペイヨーテはウバタマというサボテンから作る幻覚剤の一種。このサボテンは日本でも盆栽市などで簡単に手に入る。

こうしてラムザはその後2年間、ナイトの家庭教師となって、神知学から量子力学にいたるまで、あらゆることを教えた。ナイトが頭のいい娘に見えるのは、たぶんこのせいだろう。だがしかし、アトランティスほど進んだ文明からやって来た者が、いったいなぜ彼女のほら話にまで付き合うのか、この説明にはなっていない。いずれにせよ、ラムザは彼女に幽体離脱体験をさせた。この体験はたいへん異常な体験だったようで、彼女は自身が感じた無上の至福体験を、これ以上ないほどすばらしいメタファーで表現している:“私は...海のなかの、お魚になったような気がしたの。”

彼女に転機が訪れたのは、息子のブランディーが“生命へのアレルギー反応”を示したときだった。ブランディーはアレルギーを抑える注射を受けねばならなかったのだが、その注射にもアレルギーを示したのだ。運よく、“ラム君”(ナイトはその霊的インベーダーをこう呼ぶ)が助けに来てくれて、彼女に手かざしを教えたのである。彼女は“ほんの1分もかからない”祈祷でブランディーを直してしまい、めでたく診療代金を節約することができた、というわけだ。彼女は奇跡をやって見せ、今では彼女が公衆の面前に現れるのを止められる者は誰もいない。

こうした意外な結末となったのは、いったいなぜだろうか。そしてJ・Z・ナイトはいったいなぜ、これほど多くの信者や生徒を獲得することができたのだろうか。それはおそらく、ラムザが結局のところフェミニストであり、もし自分自身の男性の肉体をもって現れたら、神は男性であり永遠に女性を虐げる側に荷担する、という伝説を不朽のものとする、ということを認識していたからだろう。

彼はそう言ったの。だから宗教を実践するのでさえ、教義上から女は男に虐げられてて、人並みには扱われてないってわけ。じっさいにエホバは女をバカにしてるのよ。だから彼はこう言ったわ:“教えを拡めるには、女の肉体を通じて拡めねばならない。これは大事なことだ。”

こうした神のフェミニズム化は、神の男性性に嫌気が差している多くの人に喜ばれるに違いない。それにたぶん、私たち神を信じない男どもにだって、J.C.よりはJ.Z.の方がカワイイし、ずっといいだろう。だが、彼女のメッセージには、他の宗教の主張とたいして変わるところはない。彼女は、ラムザは人々が人間性を獲得して、“潜在能力の新たな地平を切り開くために心を開く”のを手助けする、と主張している。たかだか信者数3,000人ばかりのちっぽけなラムザのカルトに反対する者が多数いるが、このことは驚くには値しない。彼らはラムザのカルトの中に、神を見出そうとしているのにすぎないのだ。もっとも、高価な入場料を払わなければその扉の中に入れてくれさえしないのだ、ということを、彼らが気づいているかどうかは疑わしいが。

齢35,000歳のクロマニヨンの幽霊なんてものが突如タコマのキッチンに現れて、センターやボイド、自愛と罪悪感のない生活、あるいは愛と平和にかんする深遠なる真理を説き明かす、などということが生じる可能性なら、航空宇宙科学者に計算してもらうまでもなく、ほぼゼロに等しい。誰もがそう思うだろう。だが、多くの人にとって、信じようとする意志はたいへん強いものであるため、このようなばかげた意見でさえ合理的に思えてしまうものなのだ。これに加えて、信者の多くにとってラムザへの信仰は“効く”のだ。ある信者曰く、“私は、周囲の人たちにおおいなる変革が訪れるのをこの眼で見ました--希望を失っていた人たちが、希望を取り戻したのです。”多くの人は意味づけや意義づけなどまったくせずに人生を送っているから、およそばかげているとしか言いようのないことでさえ--もしそれが意味や意義を与えてくれるなら--合理的に見えてしまう、事実はそんなところだ。もちろん本当に深遠なものではない。こうした新たな発見によって、人生はより善きものになるのだ、ほんの少しの間だけ。

こういう人もいるかもしれない。じゃあ、世界中にあまた存在するラムザの類なんて、ほっとけばいいじゃないか。たとえ彼らがただのでっち上げでも、結局のところ人々の役に立っているんだから。彼らが誰か人に危害を加えない限り、ほっといたらいい。たとえ彼らが人に危害を加えたとしても、犠牲者は大人だし、自分から選んで搾取されたり虐待されたりするわけだろう。もし選べるなら、自分から進んで犠牲者になるという権利もあるんじゃないか?

たしかに、そういう場合もある。だが、こうした大人たちが我が子も連れていく場合もある。こうした大人たちは私たちほど自由でない場合もある。ラムザがあなたから財産以上に大切なものを奪っていく場合もある。ジム・ジョーンズ師とその信者900人あまりが、1978年にガイアナのジョーンズタウンで集団自殺を遂げたのを忘れた人はいないだろう。ナイト女史が信者の生命にとって脅威だというわけではない。だが、信者の尊厳にとっては脅威なのだ。

関連する項目:カルロス "Carlos,"チャネリング channelingブライディー・マーフィー Bridey Murphyエドガー・ケイシー Edgar Cayceラマ Rama



参考文献

読者のコメント

Alcock, James E. "Channeling," in The Encyclopedia of the Paranormal edited by Gordon Stein (Buffalo, N.Y.: Prometheus Books, 1996), pp.759-766.$104.95

Clark, Nancy, and Nick Gallo."Do You Believe in Magic - New Light on the New Age," Family Circle, Feb. 23, 1993, p. 99. According to Clark and Gallo, an estimated 3,000 people are enrolled in Knight's school, with as many as 1,500 living in the Tacoma area. Five years later she is still going strong.

Gardner, Martin. The New Age: Notes of a Fringe Watcher (Buffalo, NY: Prometheus Books, 1988).

"Voices from Beyond: The Age-Old Mystery of Channeling," in The Fringes of Reason (New York: Harmony Books, 1989).

Copyright 1998
Robert Todd Carroll
Last Updated 11/02/98
日本語化 02/19/00

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